平城遷都1300年 奈良・読書の旅

 今日は,アヤコさんとうちの相方と一緒に,奈良県立図書情報館で開催された「平城遷都1300年 奈良・読書の旅」に参加してきました。2時間ほどのイベントで,最初45分で,奈良の十津川を舞台にした「一月物語」に関する講演を聴いてから,30分程度,読売新聞編集委員の竹村登茂子によるインタビュー,それが終わってから参加者との質疑応答でした。
 講演の中で印象に残ったのは次のようなことでした。

・平野さんの作品では,Technologyの境目を舞台にした作品が多い。葬送の産業革命の時代,日蝕ルネサンスの時代,現代のWeb技術を舞台にしたものなど。これは工学的な技術そのものを対象とするだけではなく,工学的な技術が政治的,社会的な技術にどのような影響を与えるのかを書いてみたかったため。また,Webは知識的な境目になり得る。例えば,教育ということを例に取ると,最初はソクラテスプラトンのように,師と弟子の1対1の形式が取られていたことから,書籍という形態を取り,今はWebで入手するように形態が変わっている。このような変化は作家として刺激的な題材である。
・作家という仕事は社会の圧力が強いときはその圧力に対して単純な態度を示して対応することができる。例えば,差別が強いときは,その差別に対する問題意識を作品にすればいい。しかし,社会の圧力が弱い時代においては,単なる社会の現状に対する反対だけではなく,それではその現状に対してどうするかというcreativityが必要になってくる。
・多様な読書というのは,自分の持つ固定した価値観をほどくものであると同時に,多様化のきっかけになりうる。
・今日,明日には関係ないが,先に役立ちそうな本を読んでおきたい。
・「決壊」という作品を書きながら,自分が「決壊」しない秘訣は,自分の作品をある意味で自分とは切り離しながら書いているところにあると思う。また,あまり細かいことを気にしない性格もあるのでは?
・作家の仕事は社会との接触が希薄になるところがあるので,社会との接触を持つために,対談を受けたりしている。

などなど,示唆に富んだ内容でした。抜けがあったら,フォロー願います。
 僕は特に,Technologyの境目の話と,creativityの話に興味を持ちました。