DE VITA CAESARUM - Gaius Suetonius Tranquillus

「スエトニウス - ローマ皇帝伝」読了。

 塩野さんのローマ人の物語タキトゥス年代記などで知っている話もあった一方で、この作品で初めて知るエピソードなども多く、楽しんで読むことができました。ただ、エピソードの集大成という作品構成になっていて、この作品から歴史的な流れ、皇帝の治世の全体像は把握しづらいという国原吉之助先生の解説は的を射たものだと考えます。
 さて、次はルネサンス期の作品にトライしようと思います。ページ数が多いのが気になっていますが^^; 岩波文庫版と異なり、文章はまだ平易な日本語なので、まだ読めるんではないかと見込んでいます。



 以上のように人物の業績や言行を、時代や周囲の流れや背景と関係づけない記述方法は、史料として致命的な欠陥を持つと非難されてもやむをえない。あるいはまた、スエトニウスの記述方法は、歴史上の生きた人物を対象としながら、無生物の文法現象を、諸特質に応じて分類整理し記述する文法学者の方法とそっくりだと貶されもしよう。

 さらに彼の方法によると、国家的見地から、あるいは歴史上の意義の点で、どんなに大切であろうと、皇帝が個人的に関与し、あるいは参加していない限り、いかなる戦争も内政、外交上の事件も無視される。『皇帝伝』の中には、当時の有名な将軍コルブロもアグリコラも現れないし、アルメニア戦争もない。何度読んでもカエサルアウグストゥス時代の内乱の経緯も、ネロ没後の六八年から六九年にかけての混乱の全体像も理解できないのである。

ローマ皇帝伝 解説より