課題図書読書中

「ローマ亡き後の地中海世界(下)」を読み進めています。月曜日の9日に塩野さんのサイン会が旭屋書店本店であるので,それまでに読まないと,と思っています。第五章 パワーゲームの世紀まで読了しています。残り1/4くらいなので明日1日で読めるでしょう。
 この前も書きましたが,下巻は塩野さんの新しいルネサンスものを読んでいる雰囲気になります。海の都の物語と戦記物三部作を読み進めているのと同じような感じですね。この作品では特に戦記物三部作の登場人物の経歴が,これらの作品よりも詳しく描かれているので,戦記物三部作を読み返すときに参考になりそうです。



 それにしても,正規の海軍の総司令官が,手みやげに考えていたのが拉致者であったということくらい,当時のトルコ帝国海軍の性質を示すこともなかった。何しろトルコ帝国は,正規の海軍の総司令官に任命したからには海賊業から足を洗え,とは言っていないのだ。それどころか,海賊行為は後方擾乱作戦でもあるのだから,ますますそれに力をつくしてくれ,と言っているのである。赤ひげの総司令官就任の報が,地中海に面する国々の宮廷を駆け回ったのも当然であった。

ローマ亡き後の地中海世界 下 第五章 パワーゲームの世紀 赤ひげ,トルコ海軍総司令官に より


 ヴェネツィアの政府は,領土の拡大には関心はなく海外との自由で安全な交易しか重要視してこなかったが,トルコのスルタンの関心は,領土の拡大にあって交易にはなかったのだ。価値観の相違だが,このような場合,勝負を決めるのは,「理」ではなく「力」なのである。海軍力ではヨーロッパ一であったヴェネツィアも,「量」で,しかもその量を海賊に一任してでも攻勢に出てきたトルコ帝国には,一国のみでは大国できなくなっていたのであった。


ローマ亡き後の地中海世界 下 第五章 パワーゲームの世紀 対トルコ・連合艦隊 より