というわけで,久しぶりに専門のお話です。あまり詳しい背景説明はなしにして,いきなり本題にして短く。
回路について解析するときに便利な手法として,単位法があります。単位法で計算をすると,換算が楽ですし,扱う数字が極端に大きかったり,極端に小さかったりしないので,得られた結果の持つ意味を直感的に把握しやすいというメリットもあると思います。
ただ,単位法で計算をするときに気をつけないといけないなと僕が思っているのは,インピーダンスなんです。例えばこんな場合に。
まず,電圧源の回路で,電圧は1p.u.で固定としましょう。ややこしいので,電力の基準も1p.u.で固定しておく。このときに,負荷が1p.u.の電力を消費するときの,負荷のインピーダンスは(純抵抗とすると),1p.u.になります。ここで,負荷が2p.u.の電力を消費するとすれば,インピーダンスは2p.u.ではなく,0.5p.u.になります。理由はであることから。この逆数になるというのがポイントで,「単位法だからそのままp.u.が使える」と思って,逆数にすることを意識しないで突っ走ると,求めるものが変わってきてしまいます。まぁ,突っ走ったとしても,後で答えを吟味したときとか,得られた回路の物理的な意味を考察すると,そこで「おかしい」と気がつくことが多いのですけれども,それでも,やっぱりロスしてしまったことは間違いないですからね。このパターンを一歩進めると,負荷が1p.u.の皮相電力で力率が遅れ0.8のときの負荷のインピーダンスは何p.u.か? という話が出てきます。さて,これが
になるというのはいいでしょうか? さっき書いた,逆数になるというパターンになります。まだこれは符号が変わるだけです。次に,負荷が1p.u.の有効電力を消費して,力率が遅れ0.8のときの負荷のインピーダンスは何p.u.か? という問題設定にすると,インピーダンスは,
になります。この結果を見ると,少し戸惑ってしまうわけです。実部が1くらいになっていいのにと思っていると,値がずれていますし,
になり,少し小さめの値じゃないか? と思ってしまうんですよね。僕が慣れていないだけかなぁ。
同じような感じで,負荷が2p.u.の有効電力を消費しているときに,力率が0.8であったのを,補償するためにコンデンサを並列に入れて,力率を1にした。という問題を設定するときに,コンデンサの容量が=0.667p.u.となります。これもちょっと,出てきた数字だけではピンとこない数字に思えてしまうんですよね。逆数が絡む演算だけなんですけれども,複素数になっているからでしょうか? 具体例は挙げませんが,インピーダンスを10%補償するというような話になってくると,また,すぐには意味が理解しにくい数字が出てきて,計算を間違えたのかと思ってしまう。もしくは,10%という数字だけを意識して,逆数と言うことをあまり意識せずに間違った数字で計算を進めてしまうと言うことになりがちです。
単位法で計算をするときは電力,電圧を設定して,電流からアプローチをするというのがやはり使いやすいのかなと思っています。インピーダンスだと,負荷の電力からのアプローチになるのですが,数字の設定と,得られた結果の意味を良く吟味することが欠かせないプロセスになります。最近注意していることです。