高瀬川 - 平野啓一郎

 読了しました。
 最後の「氷塊」は興味深く一気に読みました。あれこれ書くとネタバレになってしまうのですが,こういう表現法があるのだなと思って読み進めています。主人公2人のつながりをあるところでは明示して,あるところでは明示しないで。それも文章として明示するだけではなく,書き方として明示してあったりするのは本当に興味深く読みました。縦書きで書かれた文章の右から左へ時間が経過していっているのですね。



 夭死は時に,役目の終わりを意味する。それは,死の直前の行為を素早く生の目的化する一つの暗示である。彼女は決して少年を産むためにこの地に生を受けた訳ではなかった。産んだ後に,たまたま死んだというに過ぎない。しかし,その早すぎる死の不合理が,何か意味を求めるとするならば,結局は出産を一つの宿命とするより外はなかった。

氷塊 - 平野啓一郎 より