国際単位系SI

 産業技術総合研究所 計算機標準総合センターからダウンロードできる国際単位系(SI)に関する第8版の日本語の文書を読みました。
http://www.nmij.jp/chishiki/si.html
 こういう標準企画書はできるだけ原文で読みたいと思っているのですが,このSIに関しては,SIの言語がSystème Intenational D'Unitésというフランス語であることから,「出典を明らかにする場合や解釈に疑義のある場合に権威があるのはフランス語のテキストである」と記載があるように,原文がフランス語になっています。フランス語はよく分からないので,日本語で読んでいます。原書が英語でないので,英語で読むのと日本語で読むのとのでは,原書ではないという点で違いはありませんからね。

 内容に関しては,大学でK先生から教えて頂いたことがこのSIの定義に沿ったものであると言うことを確認できたことが収穫だったと思います。日本の(少なくとも僕が学習した範囲での)高校までにおける物理量の記載法については,SIの要求に「準拠していない」ということが確認できました。
原則については,1.1節や5章に明確に記載されています。



 量(quantity)の値(value)は一般に数字(number)と単位(unit)の積として表される,単位とは単にその量の基準となる特別な例のことであり,数字は「単位」に対する「量の値」の比を表す。

第8版SI文書 1.1 量と単位


 量の値(the value of quality)は数字(number)と単位(unit)の積として表され,単位に掛かる数字は,その単位で表された量の数値(numerical value)を表す。量の数値はどの単位を選ぶかで決まる。したがって,ある特定の量を考えた場合,その値(value)は単位の選択に依存しないが,その数値は単位に依存して変化する。

第8版SI文書 5.3.1 量の値を数値,及び量の四則演算

 高校のときなどは,
m = 1.0 [kg]

g = 9.8 [m/s^2]
というような表記をよく見たのですが,この場合の単位をカッコで囲んでいることは,「量(quantity)の値(value)は一般に数字(number)と単位(unit)の積として表される」の積として,特別な意味を成さないことになります。例えば,abの積abを,わざわざa[b]と書くかと言うことです。積としての意味は持ちますが,わざわざカッコで囲む意味があるかどうかと言うことになります。なぜ日本でこのように教えられているのかはよく分かりませんが,歴史的な経緯があるのでしょうね。小学校のときの文章題などでも,計算だけして,最後に,
(答) 300(kg)
というような書き方をした記憶があるのですが,最後にまとめて,答えを記載して,わざわざカッコに単位を入れるというような理由は,明確に記憶していません。僕が忘れただけなのか,教えられなかったのか理由はよく分かりませんが…。これからSIを遵守していくのなら,単位の記載の教育から変えていったら良いんじゃないかなと思うのですが,なかなか難しいのかもしれませんね。資格試験の最近の問題でも,単位をカッコで囲っているのをよく見かけますし,とある解説には「問題ではVおよびXの単位は与えられていない,しかしV[V], X[Ω]と意識して回答した」という記載があったりします。
 物理量を文字表記した場合は,「数字(number)」だけを意味するというとらえ方をしているのでしょうか? それならSIの考え方には準拠していないと言うことになります。物理の大学入試問題などでよく見る,
「物体の質量をm [kg]とし…」
という標記も,この考え方であり,SIに準拠していない考え方だと(私は)判断します。

 標記に関する問題提起はあちこちで上がっていると考えます。これが,いつ,どのようなことをきっかけに変わるのでしょうか? ひょっとしたら,変わらないかもしれませんけれど。あちこちで,20 [Kg]と言うような重さの標記を眼にする状態が続く現状では…。



 単位記号には,その周囲の文字の様式とは関係なく,ローマン体(立体)を用いる。原則として単位記号は小文字で表し,その名称が人名に由来する場合は記号の最初の一文字は大文字で表す。

第8版SI文書 5.1 単位記号