ローマ亡き後の地中海世界 上

 塩野さんの久々の新作の「ローマ亡き後の地中海世界 上」を購入しました。少しずつ読み進めていますが,これまでの塩野作品と時間軸では守備範囲が若干違うので,昔の世界史の時間で聞いたことを思い出しながら読んでいます。また,適当な資料を読み返した方が良さそうですね。それでも,地理的な事項に関しては,頭に入っている内容で追いつけているので,その点は苦労していないかなと思っています。



 海に出て行くことで生活の糧を得ようと思うならば,選択の道は二つしかなかった。交易か,海賊か,である。保存の方法と行っても乾燥か塩漬けしかなかった時代,漁業は選択しには入らなかった。古代ローマでは盛んに行われていた牡蠣の養殖も大規模で本格的な魚の生簀も,中世人は知らないで過ごす。技術が忘れ去られたのではない。じっくりと腰をすえて取り組む必要がある産業には,農業がその典型だが,平和と安全が保障されることが最重要の条件になる。中世は,それが保証されなくなった時代であった。

ローマ亡き後の地中海世界 第一章 内海から境界の海へ サラセン人 より