賢帝の世紀

文庫版を買いました。トライヤヌス帝,ハドリアヌス帝,アントニヌス・ピウス帝を扱った,このIX巻はローマの安定成長期を描いているという点で,興隆期を描いたそれまでの8作品や衰亡機を描くXI巻以降とは作風が違うなと言うように感じています。これまでにいろいろと書いているので,詳しくは書きませんけれど。
 そして,五賢帝マルクス・アウレリウス帝がローマの頂点を描く「賢帝の世紀」では取り上げられず,XI巻の「終わりの始まり」のスタートであるのも塩野さんのローマ人の物語執筆以前からのローマ史観であることは,これまでも何度もかいている通りです。文庫版の26巻の帯には
「帝国に平穏な秩序を与えたのは「ピウス」と呼ばれる皇帝だった」
とありますが,この「ピウス」の負の側面に目を向けるのもXI巻からです。やはり塩野さんは衰亡機を書く方が上手いのかなと思うのは,海の都の物語での印象が強いからかもしれません。最終巻が出るまでに,海の都の物語を読みたいなと思っています。日本語集中モードに切り替えてもいい時期かもしれませんね。